略字を覚える場合、このページを読んだあと、《前置符別の略字表》をお読みください。

《50音順の略字表(基本)》、および《50音順の略字表(全部)》は、記憶の確認や索引としてご利用ください。

以下の記述は、すでに点字を一通りマスターされた方を対象としています。

マスターといっても、通常の点字(紙に書いたりパソコンで入力したりする点字)と違って、指点字には分かち書き(マスあけ)というものがないので、それほど難しいことではありません。

50音・数字・アルファベットなどを覚えれば大丈夫です。しかし、分かち書きがないからといって、ただ無表情に打ったのでは、読み取り手に意味がうまく伝わりません。

文節(厳密な意味での文節を指してはいません。)ごとに、わずかにポーズを置いたり、強調したい部分にアクセントを付けたりするなどの工夫が必要です。

「ありがとう」(点字では「ありがとー」と書く)という言葉は、点字では濁点も含め6マスを使いますが(指点字で言えば6回打たなければなりませんが)、略字を使うと2マス(2回)で済みます。

1マス目(1回目)は「4・5・6の点」、2マス目(2回目)は「あ」(つまり1の点)です。

以下、1マス目(1回目)に当たるものを「前置符」、2マス目(2回目)に当たるものを「略字本体」、両方合わせたものを「略字」と呼ぶことにします。

なお、略字本体が、「ド」・「ミュ」・「ジョ」・「ピョ」・「ビョ」などのように2マス(2回)になるものもあります。

その場合は、1マス目(1回目)が前置符、2・3マス目(2・3回目)が略字本体ということになります。

略字の元になった言葉(上の例で言えば「ありがとう」)を、「元の言葉」と呼ぶことにします。

前置符には、「4の点」、「5の点」、「6の点」、「4・5の点」、「5・6の点」、「4・6の点」、「4・5・6の点」、「2・3・5の点」の8種類があります。

前置符の役割は、次に来る文字が通常の文字でなく略字であることを示すと同時に、同じ略字本体を持つ略字どうしを区別することです。

略字本体が同じ「あ」でも、前置符が「4・5・6の点」なら「ありがとう」、「4・6の点」なら「あります」となります。

上記8種類の前置符は、他の前置符(濁音符・拗音符・拗濁音符・半濁音符・外字符・特種音符など)と混同されないような略字本体と組み合わせてあります。

ただし、「指点字」および「自由」を表す略字は、「ヴュ」および「フュ」という特種音と同じになってしまっています。

これは、略字を作った当時、まだ、この二つの特種音が点字表記法として公になっていなかったからです。どうぞご了承ください。

すべての略字に共通して言えることは、「略字本体の文字は必ず元の言葉の中に含まれている」ということです。

元の言葉の第1文字目になっているとはかぎりません。

「ありがとう」の略字本体は「あ」ですが、「なるべく」の略字本体は「る」です。

ここにいう「文字」とは、点字式に表記したものを言います。

つまり、「コミュニケーション」という言葉には、「む」という文字は含まれていますが、「み」という文字は含まれていません。

また、「通訳」・「状況」などの略字本体に「ー(長音)」が使われているのは、これらは点字で「つーやく」・「じょーきょー」と書き表されるからです。

元の言葉が4マス以上になるもののみを略字として採用しました。

ただし、「です」だけは3マスなので例外です。

略字表の中に、「○下がり」という記述が出てきます。

この言い方は、点字の世界では慣習的にもちいられているものですが、一応説明しておきます。

具体的には、「イ下がり」・「リ下がり」・「レ下がり」などと書いてあります。

点字で、「あ・い・う・え・お・ら・り・る・れ・ろ」の10個の文字は、マスの中の上4つの点の組み合わせでできていますが、これらを、文字の元の形を保ったまま、1点分下に下げたものが、「イ下がり」・「リ下がり」などとなるわけです。

「り」は1・2・5の点、「リ下がり」は2・3・6の点です。

点の組み合わせが限られているので、略字の中にはむりやり点を取ったり下げたりして作ったものがいくつかあります。

「関係」・「そうです」・「東京」などがそれです。表の中にそれぞれ注釈が付けてあります。覚えにくいとは思いますが、ご容赦ください。

略字表の中の「☆」の付いたものについて説明します。

全部で15個あります。以下にそれらを記します。

注釈にもありますように、( )の中の言葉に対しても、同じ略字を使うことができます。

つまり、これらは、言い切りの形以外にも、同じ略字を使って、おうよう範囲が広げられるということです。

例えば、「思います」という略字を打った後に「した」・「せん」などを打てば、それぞれ「思いました」・「思いません」となります。

同様にして、「気がしま」した、「わかりま」せん、「がんば」らない、「がんば」ろう、「くださ」った、「くださ」る、「くださ」れば、「おもしろ」かった、「おもしろ」くない、「難し」ければ、「できな」ければ、「わけにいかな」くて、「なければならな」かった、などと、いろいろに使うことができます。

実際の会話では、言い切りの形で使われる頻度が比較的高いことと、統一性の点から、言い切りの形を基本としました(「ください」に関しては、正しくは「言い切りの形」とは言えないのかもしれませんが)。

最初は言い切りの形だけに使い、慣れてきたら( )の中の形にも使うようにすればいいでしょう。

なお、「かもしれません」、「ざるをえません」、「なければなりません」、「やむをえません」、「わけにいきません」などは、上記の決まりに従えば、略字は使えないことになります。

これらも許容範囲に入れたいところですが、複雑になるのでやめました。

ある場面で、特定の言葉が頻繁に出てきて、しかもその言葉が略字化されていない場合、打ち手と読み取り手とが相談して、その場限りの略字を作ってもかまいません。

これを「可変略字」と呼んでいます。例えば、前置符として「2・3の点」などを用いてもいいでしょう。

略字とは言えませんが、点字の世界で慣習的に使われている「くりかえし記号」というものがあります。

「たびたび」・「やすみやすみ」というとき、「たび」・「やすみ」の後に「2・3・6の点」を打ちます。

また、「ときどき」のように、あとが濁る場合には「2・3・6の点」の前に「5の点」を付けたりします。

この「くりかえし記号」は、正式な点字表記の記号としては認められていないものですが、便利ですので、指点字の際には使って差し支えないでしょう。

略字を覚えるのに、略字カードを作るのも有効な方法です。

指点字を打つことの多い方は元の言葉を先に見るようにし、読み取ることの多い方は略字を先に見るようにすればいいでしょう。

余談になりますが、英語点字の略字には前置符を持たないものがたくさんあります。

これは、単語と単語の間のマスあけが前置符の役割を果たしているからです。

指点字にはマスあけがないので前置符は必ず必要なのです。

以下は、略字を使った文例です。「 」の中は、略字で置き換えることができます。

「できる」「かどうか」「わかりま」せんが「考え」てみ「ましょう」

「はっきり」した「説明」をして「くださ」って「ありがとう」「ございま」した。

「必ず」しも「日常」「生活」に無「関係」「問題」とは言えない「でしょう」

「難し」くて理解「できない」のでもっと「一生懸命」「勉強」「なければならない」「思いま」した。

「結局」そうなる「だろう」という「気がします」

「自由」「質問」する「わけにいかな」かったので後で「電話」「ますから」「よろしく」「お願い」します。

「指点字」という「コミュニケーション」方法は、まだ「ほとんど」しられていませんが、「具体的」「どういう」ものか「ということ」は、「例えば」「友の会」の集まりなどに行けば「実際」に見ることが「できます」

「自分」にとって「本当」「必要」「情報」「かどうか」よく「調べ」「ほうがいい」「でしょう」

「略字」を覚えるのは「面倒」「だけど」使ってみると「おもしろい」「ですから」「がんば」って「ください」